テッド・チャン『息吹』感想

 

S-Fマガジン 2010年 01月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2010年 01月号 [雑誌]

 

最近になって SF が面白く感じられてきました。三体もなかなかよかったですよね。それ系統で検索していたら、テッド・チャンの『息吹』がいいぞというのが引っかかりました。『あなたの人生の物語』の人ですが、あれもかなり良かったです。どうも今年中に『息吹』が含まれた短編集がでるそうなんですが、ちょっと我慢できなくなりまして、それが収録されている SF マガジン 2010/01 を図書館で借りてきました。で感想ですが...

 

最近ぼくが好きなのはですね、進撃の巨人の無垢の巨人や三体の脱水体のような、なんでそんなものがあるのか説明なしにまるでファンタジーの生物のようなものをポンと物語の中心においてしまい、僕らに馴染みのある科学的な取り組み方でそれらと付き合っていこうとする作品なんですね。


ふと思えば我ら人類もなんの説明なしにこの世にポンと置かれているわけで、その意味でそういう作品は、人類を別なものに置き換えることで、科学で語ることとその視座が僕らにとってとても馴染み深い安心できるものとして描かれている気がします(ちょっとうまく説明できてないと思う...)。


『息吹』ですが、その世界の人類はどうもロボ的な何かみたいなのですが、主人公たちのささいな気付きやわからないことへの取り組み方などはとても馴染み深く、彼ら人類?の仕組みの探求、得られた知見からの考察、絶望、未来の考察は自分にとってはとても馴染み深いものでした。

この作品は短編ですが、読んでいる最中はすーっと深く暗く静かなところに降りていくような、そんな心地よさがありましたよ。

素晴らしい作品だと思います。