列車と睡眠『鬼滅の刃 7』

鬼滅の刃 7 (ジャンプコミックス)

鬼滅の刃 7 (ジャンプコミックス)

 

いまさら鬼滅の刃の話もないかなと思うけれど、この 7 巻を読んで思いが溢れてきたので、書いておこうと思う。

鬼滅の刃の 3 巻が面白かったので、他のを読みたいと思った。続きではない巻を読むことに刺激を受ける俺はすこし飛ばした巻が良いと思い、本屋で思案していると、店頭のディスプレイに鬼滅の刃のアニメの予告に目が止まった。音声はなかったが、炎を纏ったつり目の男が何かを叫んでいて、サブタイトルが『無限列車』と書かれていた。1,2,3 巻と 16,17 巻あたりを読んでいる俺はこの漫画がどうもバトル空間をいじる傾向があると思っていたので、『無限』という言葉に明確な意思を感じ、しっくりくるものを感じ、そして『列車』という言葉に完全に心を持っていかれた。絶対に面白い。というわけで、コミックの裏に書かれた粗筋から、無限列車の話を探し、7 巻を購入したわけだ。

列車。物語の時代から想定通り蒸気機関車でのバトルだった。本の途中から読んだので、バトルといっても主人公たちはいきなり寝ている。ここで俺はジョジョの奇妙な冒険の第五部のグレイトフルデッドとの戦いを思い出した。読書中に別のことを思い出すのは良い作品の証拠だ。新しい良作は過去の良作の上に成り立っている。あの戦いは睡眠ではなく老化だけれど人々は動かなくなってしまう。眠っているのと似たようなところがある。そう列車と睡眠というのはどうも切り離せないものなのではないかと思っている。宮崎駿千と千尋の神隠しで物語後半、銭ババアのところに行くために海を電車で渡っていくシーン、あれは確か、雑誌の Cut かなにかの宮崎駿のインタビューで読んだけれど、あのシーン、宮崎駿の頭にはもう一つ案があって、それは主人公の千尋は電車のなかで寝てしまうという。そしてはっと起きると、もう沼の底の駅をすぎたかまだなのかもわからず、外をみると真っ暗でまるで銀河のように星々が渦巻いているという。たしか羽田だか成田空港を夜に離陸する時に見える東京の街のようだと、そんなことを... 確かいっていた... それが銀河鉄道の夜の話だったかなんだったかよく覚えていない...

この季節、電車の座席はホカホカに温められていて、座って読書していると意識を持っていかれてしまう。鬼滅の刃の主人公たちも走る電車の中で眠らされてしまい、夢の中で難しい戦いをする。静謐な世界もあるし変な世界もある。そのあたり爆走する電車との対比がたまらない。

電車の中というのも興味深い空間で、公に身を晒しながら、眠ることで個の世界に埋没してしまうという、危うく、中途半端なところなのだ。SAO でリアル空間で殺されそうになるところとかが好きな俺はそこもたまらない。海外の人は電車の中では危険なので眠らないというはなしを聞いたことがあるが、だとしたら列車で睡眠バトルというのは日本独自の文化ってことにならないかね。

ああそうそう、電車といえば仮面ライダー電王だが、デンライナーは好きだが、本当はこういう蒸気機関車的な敵の列車が登場して欲しかった。たしか Vシネマ枠でそういう感じの木製の内装の列車が登場したことがあったような気がする... が外面が気に入らなかった記憶がある。つまり、ファイナルファンタジー6で魔列車というような蒸気機関車みたいなのを期待していたわけだけれど、あれも当時かなり気分があがった記憶がある。というかあの作品はかなり良かった。たしか技術と魔法の融合みたいな感じだったよね。どうも蒸気機関車というのは妖怪とかファンタジー色が強いものと現代の科学やら技術やらの中間点にいる極めて美味なものなのかもしれぬ、いやそうだと思った。